脱炭素型ライフスタイルの選択肢

カーボンフットプリントと削減効果:全国・52都市・10地方・4大都市圏別データベース

脱炭素型ライフスタイルとは?

衣食住や余暇の過ごし方をはじめとする私たちのライフスタイルは、気候変動への影響とその対策に密接な関わりがあります。市民の暮らしを支えるためにライフスタイルに関連して排出される二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスは、全体の約6割を占めています 。2050年までの「カーボンニュートラル」の実現が政府により宣言され、数多くの自治体が「ゼロカーボン・シティ」宣言を行っているように、脱炭素社会へ向けた機運が高まっています。しかし、政府や企業が主に担うエネルギーシステムの転換などの供給側の対策についての議論は行われていますが、気候危機を乗り越えるためには市民や地域に具体的に何ができるのかについての情報は十分ではありませんでした。

こうした中で、脱炭素型ライフスタイル(気候変動への影響を小さくする持続可能なライフスタイル)への注目が高まっています。これまでの対策の中心であった再生可能エネルギーや移動手段だけでなく、食生活、衣類などの消費財の購入も含め、市民の暮らしを支えるあらゆる製品やサービスは、その製造、輸送、使用から廃棄までの間に生じる温室効果ガスを排出しています。これらの消費のあり方を見直し、脱炭素型の製品やサービスを利用していくことが、温室効果ガスを削減する持続可能なライフスタイルにつながります。

カーボンフットプリントとは?

このデータベースで取り上げている家計消費のカーボンフットプリント(ライフスタイルに関連する温室効果ガス排出量)は、市民の生活を支える様々な製品やサービスの利用を通して排出される二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを指します 。この考え方では、直接的に家庭で利用する都市ガスやガソリンの燃焼だけでなく、家計が消費するあらゆる製品やサービスの資源採掘、素材生産、製品組立、輸送、使用、廃棄までのライフサイクル(ゆりかごから墓場まで)において排出される温室効果ガスを把握することができます。

Footprint breakdown graph

国立環境研究所「産業連関表による環境負荷原単位データブック」(3EID)と総務省「平成27年産業連関表」を用いた推計によれば、日本のカーボンフットプリントは、政府機関の活動やインフラ投資を除く全体の約6割が家計消費に由来し、私たちのライフスタイルを支えるために生じています。カーボンフットプリントは、脱炭素型社会への流れにおいて、企業においても「スコープ3」指標として取り入れられています。

地球温暖化を1.5℃未満に抑える目標

気候変動による異常気象、海面上昇、食糧供給、生態系破壊などへの重大な影響を低減するために、地球の平均気温上昇を1.5℃未満に抑えることの重要性が国際的に認識されています。この目標を達成するためには、世界全体で2030年には1人1年あたりのカーボンフットプリントを2500〜3200 kgCO2e(下限〜上限目標)に抑えることが必要です。本ポータルサイトで公開されているデータブックには、3000 kgCO2eを目標として、各地域別にどれだけの削減を目指す必要があるかの削減量を記載しています。

Footprint reduction illustration

この目標は、市民ひとりひとりの工夫や努力だけにより達成できるわけではありませんが、このデータベースに掲載されている脱炭素型ライフスタイルの選択肢を取り入れることで、気候変動を止めることにつながります。また、ここには記載されていないような政府や企業による脱炭素化の取り組み(製品の製造工程やサービス事業展開における再生可能エネルギーの導入、省資源で脱炭素型の新しいビジネルモデルの展開など)や、市民や企業の脱炭素型の取り組みを促進する政策(補助金、炭素税、規制、インフラ整備、情報提供など)、企業の脱炭素化の取り組みへの投資(ESG投資、ダイベストメントなど)、地域や教育現場での取り組み(環境教育、地域でのシェアリング拠点、ガイドブック作成など)を後押ししていくことも目標達成には重要となります。

このデータベースについて

このポータルサイトでは、日本の各地域(52都市、10地方、4大都市圏)における現状のライフスタイルに関連する温室効果ガス排出量(カーボンフットプリント)、および市民が取り入れることができる脱炭素型ライフスタイルの選択肢とこれを採用した場合の温室効果ガスの削減効果を紹介しています。掲載されている選択肢をたとえ部分的であっても日々の暮らしに取り入れることで、カーボンフットプリントを減らすことができます。個人でできることは現時点では限りがあっても、少しずつでも脱炭素型の製品やサービスの需要が増えることで、企業の取り組みも進み、社会全体の脱炭素化につなげることができます。また、このデータを参考にすることで、自治体・企業・地域団体などが定量データに基づき、より効果的な脱炭素型の施策や製品・サービスを展開することが期待されます。

このデータベースは、国立環境研究所(物質フロー革新研究プログラム)と地球環境戦略研究機関(1.5度ライフスタイルプロジェクト)らの研究チームによる研究成果に基づいています。この研究では、国内52都市における平均的な市民による直接・間接的な温室効果ガス排出量(カーボンフットプリント)を推計するとともに、移動・住居・食・レジャー・消費財に関する65の脱炭素型ライフスタイルの選択肢を特定し、その温室効果ガス削減効果を都市別に定量化しました 。本ポータルサイトでは、研究成果を市民・自治体・企業・地域団体などの皆様が広く活用できるよう、Environmental Research Lettersに掲載された学術論文(Koide et al. 2021)のデータ(国内52都市・全国平均)に10地方・4大都市圏のデータを加え、分析対象の65項目をとりまとめた57の選択肢をデータブックやインタラクティブツールとして次の通り公開しています。

  1. データブック(PDF冊子)には、1地域あたり2ページでわかりやすくカーボンフットプリントのデータがまとめられており、各選択肢の解説も含まれています。

  2. インタラクティブ可視化ツールでは、ご関心のある都市を地図上で選択していただくと、フットプリントや選択肢のデータをインタラクティブに操作し、比較を行うことができます。

  3. 脱炭素型ライフスタイルの選択肢解説では、本ポータルサイトで紹介されている移動・住居・食・レジャー・消費財に関する脱炭素型ライフスタイルの選択肢の説明がございます。

  4. ご不明な点についてはよくあるご質問をご覧ください。また、活用事例にございますように、本データをご活用された際は、ぜひご一報いただければ幸いです。

個人のフットプリント可視化について

2022年8月には本データを活用し、個人のカーボンフットプリントを可視化し脱炭素型ライフスタイルの選択肢を提示するプラットフォームを一般社団法人コード・フォー・ジャパン(Code for Japan)と共同開発しました。データセットおよびソースコードはMITライセンスにより公開されており、企業や行政、市民によるソースコードを利活用したカーボンフットプリントの可視化と削減を支援するアプリケーション等の開発に活用することができます。

本プラットフォームの利活用の第一弾として、Code for JapanよりWebアプリ「じぶんごとプラネット」がリリースされました。このWebアプリでは、移動・住居・食・モノとサービスに関する約10個の簡単な質問に答えることで、誰でも無料で自分の生活スタイルから生じるカーボンフットプリントと自分に合った脱炭素アクションを知ることができます。

関連リンク集

  1. 国立環境研究所・地球環境戦略研究機関 報道発表「国内52都市における脱炭素型ライフスタイルの効果を定量化 ~「カーボンフットプリント」からみた移動・住居・食・レジャー・消費財利用の転換による脱炭素社会への道筋~」(2021年7月19日)

  2. 国立環境研究所・Code for Japan 報道発表「個人のカーボンフットプリントを可視化し脱炭素ライフスタイルの選択肢を提案するプラットフォームを共同開発」(2022年8月31日)

  3. 国立環境研究所ニュース 40巻5号 研究ノート「カーボンフットプリントから考える地域に合った脱炭素型ライフスタイル」(2021年12月)

  4. 国立環境研究所 資源循環領域オンラインマガジン 環環10月号「『モノの一生』から考える脱炭素型ライフスタイル」(2022年10月)

  5. 本データと推計手法を解説した学術論文 Ryu Koide, Satoshi Kojima, Keisuke Nansai, Michael Lettenmeier, Kenji Asakawa, Chen Liu, Shinsuke Murakami (2021) Exploring Carbon Footprint Reduction Pathways through Urban Lifestyle Changes:A Practical Approach Applied to Japanese Cities. Environmental Research Letters. 16 084001

  6. 全国平均データに基づき脱炭素型ライフスタイルと削減目標を解説した報告書 小出瑠・小嶋公史・渡部厚志 (2020)「1.5°Cライフスタイル ― 脱炭素型の暮らしを実現する選択肢 ― 日本語要約版」(地球環境戦略研究機関)

  7. カーボンフットプリントの削減目標値と今後の研究展開に関する学術論文 Ryu Koide, Michael Lettenmeier, Lewis Akenji, Viivi Toivio, Aryanie Amellina, Aditi Khodke, Atsushi Watabe, Satoshi Kojima (2021) Lifestyle carbon footprints and changes in lifestyles to limit global warming to 1.5 °C, and ways forward for related research. Sustainability Science. 16, 2087–2099

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